はじめに
私は、現代でも非合理を追い続けるクリエイターが大好きだ。
どこを見てもコスパ・タイパが重視され、効率がすべてを支配するこの時代に、それでも自分の手で、自分の「好き」を形にし続ける人たちに、心の底から敬意を抱いている。
今、私たちはとても便利な時代に生きている。
テキストを入力すれば絵が出てくる。生成した絵を使って、アニメを作ることだってできる。指示を出せば音楽が生成される。ソースコードですら、AIに頼めば誰でもアプリを作ることができるようになっている。「作る」という行為のハードルは、かつてないほど下がった。
生成AIは手段の一つだ。イラスト生成や音楽生成において学習元の権利問題などは多いが、それを使うことも、一つの選択肢だろう。
実際、私もclaude codeを使って開発を進め、リサーチはgeminiを使い、notebookLMで情報をまとめている。
でも、私が本当に心を動かされるのは、そういう時代の中で、あえて自分の手で作ることを選び続けている人たちだ。
私の周りには、そういうクリエイターがたくさんいる。
イラストをすべて自分で描き、3Dモデルもすべて自分で作り、コードもすべて自分で書いてゲームを作っている弊社のメンバーがいる。効率だけで考えたら、分業すればいい。外注すればいい。AIに任せればいい。でも、彼女はそうしない。全部自分でやる。全部自分の手で触れて、自分の力で憧れの実況者に自分のゲームを実況してもらいたいから。
好きなゲームのbootleg音源を作りながら、自分の感情をオリジナル曲に昇華させている音楽家がいる。リスペクトと自己表現を行き来しながら、自分だけの音を探し続けている。彼は自分の力で、好きな会社のゲームで、オープニング楽曲を作るという野望を抱いているから。
生成AIの権利問題に怒りを感じながらも、仕事以外の時間はずっとペンを握り、推しの絵を描き、オリジナルキャラクターに命を吹き込み続けているイラストレーターがいる。ただ描くこと、作ることが好きだから。
彼らに共通しているのは、「やめる理由」ならいくらでもあるのに、やめないということだ。
AIを使えばもっと速い。別のことに時間を使った方が合理的かもしれない。好きなことだけで食べていくのは難しい。そんなことは、誰よりも本人たちがわかっている。
それでも、作る。
その姿を見るたびに、私は思う。この人たちは「非合理」に生きている。そして、その非合理こそが、私にとってはこの世界で最も美しいものだと。
さて、ここで私自身の話をさせてほしい。
学生の頃、私は映像を作っていた。自分の手で何かを生み出すことに、強い喜びを感じていた。今も会社をやりながら、細々と音楽を作り続けている。
でも、僕はクリエイターとして自立する道を諦めた人間だ。
才能の壁にぶつかった。自分が思い描くものと、自分の手から生まれるものとの間にある、どうしようもない距離に打ちのめされた。もっと上手い人がいる。私の作品など、誰にも興味を持ってもらえない。天才は、存在する。そういう現実を前にして、私は筆を置く側の人間だった。
そして、人生そのものを何度も諦めようとした。
鬱を抱え、何度も自分を終わらせることを考えた。暗い部屋の中で、もう何も意味がないと思った夜が、一度や二度ではなかった。
そのとき、私を繋ぎ止めたのは、クリエイターの作品だった。
好きなボーカロイドの楽曲が、ふと耳に流れてきた。敬愛しているバーチャルシンガーの花のような歌声が、画面の向こうから響いてきた。誰かが魂を削って形にした作品が、私の目の前にあった。
その瞬間、私は思った。
「ああ、私はクリエイターに活かされている」と。
彼らは私を助けようとして作品を作ったわけではない。ただ自分の「好き」を追い続けた結果として、それがそこにあっただけだ。それなのに、その作品は私の命を繋いだ。
ここに、合理性など無い。
誰かの「好き」が、見知らぬ誰かの命を救う。そこに論理はない。効率もない。計算もない。ただ、一人の人間が「これが好きだ」と叫び続けた、その声の残響が、たまたま僕の耳に届いた。それだけのことだ。
でも、「それだけのこと」が、私にとってはすべてだった。
だから私は、クリエイターを支える側に回ると決めた。
自分がクリエイターとして立つことは叶わなかった。でも、あの夜に私を救ってくれたような人たち——自分の衝動に魂を捧げて、非合理に生き続けるクリエイターたちのために、自分にできることがあるはずだと思った。
今、私はクリエイターコミュニティを運営し、彼らのためのプロダクトを開発している。
私がやりたいのは、「効率的にコンテンツを量産する仕組み」を作ることではない。非合理に生きるクリエイターたちが、自分の「好き」をもっと自由に、もっと多くの形で表現できる場所を作ることだ。
もし今この文章を読んでいるあなたが、何かを作り続けている人なら、伝えたいことがある。
あなたの「好き」は、あなたが思っている以上に力を持っている。
AIの方が速いかもしれない。もっと上手い人がいるかもしれない。それで食べていけるかわからないかもしれない。そんなことは分かっている。
でも、それでも作り続けるあなたの「非合理」が、どこかの誰かの人生を変えるかもしれない。いや、もうすでに変えているかもしれない。少なくとも、僕の人生は変わった。
だから、好きを貫いてほしい。
どれだけ非合理だと言われても、どれだけ効率が悪いと笑われても、あなたの手から生まれるものには、あなたにしか宿せない魂がある。
私は、そういうあなたようなクリエイターのことが大好きだ。
クリエイターのうえきばち / NextCreators について
クリエイターのうえきばちは、非合理に生きるクリエイターを支援するスタートアップです。
「好き」を貫くクリエイターが集まるコミュニティ「NextCreators」をDiscordで運営しています。一人で作り続けるのは、時に孤独です。同じように「好き」を追い続ける仲間が欲しくなったら、気軽に覗きに来てください。
また、イラストレーターやVTuberが自分のアートワークを使って約5分でWebゲームを作れるノーコードプラットフォーム「NoLogic」を開発しています。
本来、ゲームは自分の好きを詰め込み、どうやったらワクワクするに集中すべきで、どうやったら実装できるかに悩むのは勿体無い。
NoLogicから、もっと自分の「好き」にこだわったゲームがたくさん生まれてほしい。
それが、僕たちのプロダクトの名前に込めた想いです。
これからも非合理に生きる全てのクリエイターが、満足に創作ができることを心から願っています。
株式会社クリエイターのうえきばち
代表取締役
山縣 帆高